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濃厚でまったりとしたソースが食欲をそそる
和歌山「フライヤ」の厚切り牛タンシチュー
茹で野菜を入れると美味しさ倍増
川井潤
プランナー

東京の名店でもそれなりに「タンシチュー」を食べてきたつもりではある。そんな中、この10月に始まった文春マルシェに和歌山の洋食店「フライヤ」で提供されている「厚切り牛タンシチュー」がセレクトされ掲載されていて、ちょっと気になった。いや、だいぶ気になっていた。

「東京の店のモノより本当に美味しいの? 選んできたバイヤーさん大丈夫?」、そして「フライヤ」という店名から揚げ物の方が得意な店なのではないかという疑念を持ちつつも注文してみた。 和歌山にあると言う店には行ったことはないし、食べた事もないけれど……。

フライヤ

そもそもシチューはいつ頃からあるものなのか。ハウス食品のホームページを参考にすると明治4年(1871年)には「シチウ(牛、鳥うまに)」という言葉がメニューに載っている店もあるようだ。山形でも明治17年(1884年)に開業した西洋料理店で「兎のシチー」というメニューを相当高額な料理として提供していたらしい。 江戸時代が終わり、西洋文化がどっと流れ込み、文明開化に沸いた頃にシチューは高嶺の花の料理として入ってきて、料理人たちはシチューの具材として兎、羊、モツ、そして今回のタンにチャレンジしていたらしい。今回お取り寄せした店「フライヤ」の創業は昭和8年(1933年)だというから、明治からの店ほど歴史はないがおよそ90年も続く立派な老舗。

前置きはこのくらいにしておいていよいよ実食。4人前も入っているので家族みんなで食べられる。しかも内容量がひとつ200gもある。シチューのドミグラスソース分も内容量に含むとは言え、ほとんどが牛タンの重さ。普通、一頭の牛から取れるタンは1.6〜1.8kgなので一頭の半分近くの舌がこのセットに入っている事になる。タンは貴重品ゆえ値段だって張る、ちょっとした贅沢品。

パッケージを見ると、この店では創業時からソースのことを「ドビソース」と呼んでいるらしく、他店のソースとは違うと言わんばかりの創業者河内伊三郎氏の意気込み、こだわり、プライドが命名にも現れているような気がする。

タンシチュー

お取り寄せした商品のパックを鍋で5分ほど湯煎し、それをあらかじめ温めておいたお皿に移していただく。浅草の洋食屋「ヨシカミ」でもそうであったのを思い出し、家にあったバターロールを一緒に食べようと用意した。

ドビソースは見るからに美味しそうだし、芳ばしい香りも立って食欲をそそる。 肉厚ながら絶妙に柔らかいタンは唇で切れるほど。ドビソースはとろーり濃厚で口の中でまったりと絡んでくる。たまに水を飲んで口内をリセットした方が次のひと口がまた美味しくなる。ソースの味は甘過ぎることなくちょうど良い塩梅。

実はお取り寄せが届いた日には、パン以外何の具材も用意していなかったので一回目はそのまま食べてしまった。翌々日に2個目を食べた時には、レストランでよく出て来るように人参、ジャガイモ、ブロッコリーを茹でてシチューのソースの中に入れた。こうすれば味変も出来るし美味しさのバリエーション、楽しさも広がる。 お取り寄せだけに頼るべからず。自分でちゃんと美味しくする工夫もすべし、との教訓も知った。

実は2度目はさらに、東銀座のシチュー専門店「銀の塔」で食べるように、残ったドビソースにご飯を入れて食べてみた。これがまたたまらなく美味い。 うーん、こうして実際食べてみると確かにバイヤーの選択眼は正しかったと言わざるをえない。美味しかったですよ、教えてくれてありがとう。

牛タン
厚切り牛タンシチュー 4袋
¥5,530(税込)
カートに入れる

「フライヤ」という店がある和歌山県に僕はここ10年以上毎年、仕事や用事があって訪問しているが、南側の白浜やすさみ町などに行くことが多かった。 そのエリアには食にまつわるモノが多く存在し、備長炭を作っている現場を見たり、ケンケン鰹、イノブタ、伊勢海老、セミ海老、クエ、昭和31年申年製作の梅干し、ウツボ、亀の手、鈴カステラなど多くの名物を食べて来た。このエリアにも是非注目して欲しい。

逆に「フライヤ」のある和歌山市にはあまり足を踏み入れて来なかったので、この店の存在を今まで知らなかった。 今度機会があれば、このお取り寄せをきっかけに現地に食べに行ってみたいと思う。 もちろん、食べてみて全く同じ味だったら、その後はお取り寄せにしちゃいますけどね。

川井潤

profile

川井潤プランナー

フジテレビ「料理の鉄人」企画ブレーン(1993年~99年)。元(株)博報堂DYメディアパートナーズ。現在は、渋谷区CFO(Chief Food Officer)他、食品関連社、IT会社などのアドバイザーを務める。滋賀県彦根市、愛媛県真穴みかん等これまでの企画ノウハウ活かして「地域サポート」も行っている。

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