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濃密なのだが、雑味が一切ないスープ
料亭の水炊きを自宅で味わえる至福

白濁したスープを一口飲んで、やられた。

とろりと口に流れ込んで、深い滋味がゆっくりと広がっていく。溶け込んだコラーゲンが、唇を舐め、舌を包み込むのだが、そこにはいやらしさが微塵もない。

濃密なのだが、スープに雑味が一切ないので、後口がすっきりとしている。鶏肉の純粋だけを凝縮させているので、淀みが一切ないのである。なにかこう、スープの滋養で体が溶けていくような感覚がある。

これはまごうことなき、「つきじ治作」の水炊きである。あの広大な料亭で、悠々たる庭を眺めながらいただく水炊きと寸分変わらない。

治作 庭

なんでも水炊きを作る料理人は、代々一人だけが担当し、その技は一子相伝なのだという。様々な工夫や技がいるらしいが、中でも5時間炊くというのが重要だと聞いた。だが単なる時間だけではないのだろう。季節に合わせて火加減を調整し、炊き上がる様子を常に観察し、味わいのことわりをはかる眼力が必要なのに違いない。

専門の職人が、一心に目をこらしながら鶏肉を炊いている姿が目に浮かぶ。 だからだろうか。食べ進むと、飽くことがないばかりか、食欲を次第に湧き上がらせるような勢いがある。

治作

具は、肉質がきめ細かい徳島・阿波尾鶏で、このスープをまとった鶏肉をかじる瞬間が、たまらない。他の具材は、本店同様、玉ねぎだけという潔さで臨むのがいいだろう。

またポン酢も強すぎずに優しいが、スープをレンゲに取り、そこに鶏肉を乗せて、スープと一緒に食べる食べ方がオススメである。スープを飲み、鶏肉をふた切れ食べただけで、もう唇周りはゼラチン質が粘りついて、ペタペタである。

つきじ治作 水たきセット

最後は雑炊をいただこう。ご飯の甘みとコラーゲンの甘みが溶け合って、気分をまったりとさせる。

食べ終わると、気持ちが柔らかくなった。それはまだ時間と気持ちにゆとりがあった時代の贅沢が、このスープに生きているからではないだろうか。

マッキー牧元

profile

マッキー牧元タベアルキスト

(株)味の手帖 取締役編集顧問、タベアルキスト 1955年東京出身。立教大学卒。 立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、日々飲み食べ歩き、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演など行う。「味の手帖」「食楽」他、連載多数。料理評論、人物インタビュー、紀行記事の他、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文芸春秋)、『どんな肉でもうまくする~サカエヤ新保吉伸の秘密~』(生活文化社)ほか

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