なんでも水炊きを作る料理人は、代々一人だけが担当し、その技は一子相伝なのだという。様々な工夫や技がいるらしいが、中でも5時間炊くというのが重要だと聞いた。だが単なる時間だけではないのだろう。季節に合わせて火加減を調整し、炊き上がる様子を常に観察し、味わいのことわりをはかる眼力が必要なのに違いない。
専門の職人が、一心に目をこらしながら鶏肉を炊いている姿が目に浮かぶ。
だからだろうか。食べ進むと、飽くことがないばかりか、食欲を次第に湧き上がらせるような勢いがある。
マッキー牧元タベアルキスト
(株)味の手帖 取締役編集顧問、タベアルキスト 1955年東京出身。立教大学卒。 立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、日々飲み食べ歩き、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演など行う。「味の手帖」「食楽」他、連載多数。料理評論、人物インタビュー、紀行記事の他、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文芸春秋)、『どんな肉でもうまくする~サカエヤ新保吉伸の秘密~』(生活文化社)ほか