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粥は薬膳の代表的な食事。
すっぽんの滋養で虚弱を補う
麻木久仁子
国際薬膳師・国際中医師・タレント

「薬膳」と聞くと、どのようなイメージが浮かぶことでしょうか。「体に良さそうだけど苦そう」「体に良さそうだけど不味そう」「体に良さそうだけど難しそう」。体には良さそうだけど、ちょっと……という反応をいただくこともあります。あるいは「火鍋でしょ」「カレーでしょ」と、いわゆる辛いものを思い浮かべる方も多いようです。「中華料理だよね」と言う方も。ですがこれらは薬膳の一面ではありますが、薬膳そのものを表してはいないのです。では薬膳とは何か。教科書的に言うと「伝統的な東洋医学の理論に則った食養生」です。東洋医学そのものは実に奥深い理論によって成り立っているのですが、ごく普通の日常の食養生をいかにすべきかというところに落とし込んで、極めてわかりやすく言うと「季節に合ったもの」「体質に合ったもの」「体調に合ったもの」を食べるということ、それが薬膳です。例えばとても寒い日に「体が冷えたので、いつもの味噌汁に生姜を入れた」なら、それは寒い季節に合った薬膳生姜味噌汁です。「虚弱で疲れやすいので毎朝高麗人参茶を飲んでいる」なら、それは体質に合った薬膳茶です。「今日は外歩きで体が疲れたので山芋をすりおろしてとろろご飯を食べよう」ならば、それは体調に合った薬膳とろろご飯です。必ずしも木の根っこのような生薬を使わなくても、たくさんの食材を揃えなくても、複雑な味付けをしなくても、日常の食養生である薬膳は実践できるのです。

さてそんな薬膳ですが、体を労わる薬膳の代表的な食事が「粥」です。どんな時も、どんな人の体にも優しく滋養を与えるのが粥。体に不調を感じた時などにはいち早く取り入れることで、未病に対応するのです。例えば朝ご飯のトーストを朝粥にかえると、起きたばかりでエンジンのかかりきっていない体をいたわり温めます。一日の始めに胃の腑を十分に温めてなめらかに動き出せば、体も元気に働こうと言うもの。最近の炊飯器はお粥モードもあり、粒立った米とサラリとした汁の上品なお粥が簡単に作れるのでぜひお粥を日常に取り入れてみてください。粥には季節、体質、体調に合ったお供を添えて。冷え性なら生姜や実山椒を効かせた牛のしぐれ煮。どうもやる気が起こらないというような、気持ちが疲れている時は柑橘の香りが効きます。ゆず味噌などどうでしょう。お通じを整えたい時には黒きくらげと椎茸の佃煮。アンチエイジングにはくるみの白和え、などなど。

還暦を迎えて、私も疲れやすく、体力の衰えを感じることが増えました。一晩寝てもスッキリとしない、なかなかやる気が起こらない、眠りが浅い……。「ああ、もう本当に疲れちゃったわ」という時の私の粥のお供は「下鴨茶寮 命のお椀」です。すっぽんを酒入りの湯に長時間かけて煮出した出汁に昆布出汁を合わせ、薄口醤油で味付けした滋味溢れるお椀。すっぽんの効能は薬膳では「滋陰」と言い、「体に潤いをもたらし虚弱を補う」とされています。このお椀に葛でとろみをつけて、熱々の白粥にトロリとかけていただく。食するといつまでも胃の腑が温かく、じっくりと五臓六腑に染み込んでいくようで、体も心も癒やされるのです。我が家ではいざという時のために、いくつかストックしておきます。まさに命のお椀です。

下鴨茶寮 命のお椀
下鴨茶寮 命のお椀
¥6,480(税込)
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ハレの日にはトロトロの海鮮粥鍋

日常のお粥もいいのですが、実は「ハレの日のお粥」もあります。久しぶりに家族が揃った時や、お客さまがいらっしゃるときのおもてなしなどに作るのが「海鮮粥鍋」。トロトロのお粥を出汁がわりにして、粥の中で新鮮な魚介をしゃぶしゃぶして食べるという贅沢鍋です。日常の代名詞のようなお粥が、一転「ハレの日の献立」に大変身します。

海鮮粥鍋の時のお粥は、中華粥。炊く前に米を胡麻油で軽く炒め、そこにアツアツに熱した出汁を一気に注いで炊いていきます。こうすることで米が割れてふんわりとします。この状態を「米が花を咲かせる」と言うそうです。海鮮鍋用に作る粥は、出汁を多めに、途中何度かかき混ぜて少し粘りも出すようにします。そうすると後でしゃぶしゃぶした時に具材によくまとわりついて、まろやかな舌触りになるのです。海老、いか、たこ、鮭、ほたて、牡蠣、白身の魚などなど……新鮮な魚介ならなんでも。そのほか鶏肉、湯葉、青梗菜や水菜など、加えるなら灰汁の少ない材料が良いでしょう。出汁はお好みで。我が家では干し海老や干し貝柱、干し椎茸の出汁に、野菜の皮や切れ端でとってストックしておいた「ベジブロス」(野菜出汁だし)を加えたりしています。こうして仕立てた粥鍋の底に高麗人参を一本沈めておくと、どんな疲れも吹っ飛ぶような特別な鍋に。締めには溶き卵を回し入れて、啜るようにして食べます。砕いて炒ったくるみ、松の実、落花生などを添えて。滋養があって胃には優しい、万人におすすめできる薬膳海鮮粥鍋です。いま我が家の冷凍庫には文春マルシェで取り寄せた「刺身で食べられる海鮮しゃぶしゃぶ」がスタンバイ中。北海道の漁師・西田たかおさんが自身の船で水揚げした新鮮魚介を詰め合わせたもの。海鮮粥鍋にもってこいのセットです。まもなく娘が帰ってくるので、その時に作ってやろうと思っています。成人した子どもに親がしてやれることといえば、滋養のあるものを食べさせることくらい。良い日本酒も見繕っておきましょう。温かい鍋と娘の笑顔を思い浮かべながらその日を楽しみにしているのです……。

刺身で食べられる海鮮しゃぶしゃぶ(4人前)
¥6,696(税込)
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麻木久仁子

profile

麻木久仁子国際薬膳師・国際中医師・タレント

1962年11月12日、東京都生まれ、学習院大学法学部中退。知性派タレントとしてクイズバラエティ番組を中心に出演する他、司会、コメンテーターとしても活躍。2010年に脳梗塞、2012年に初期の乳がんが見つかったことから、検診の大切さや自身の体験を講演会や情報番組などで伝えている。そんな経験から食事を見直し、中でも『薬膳』に興味を持つ。その後、国際薬膳師、国際中医師の資格を取得。2020年には温活指導士の資格、2021年には医薬品の登録販売者の資格も取得。タレント業の傍ら、食を通して『体を温め、免疫力を高める』という考えや食事などを多方面で提案している。

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